令和4年度中部ブロック 障がい者雇用支援セミナーが開催されました。
令和4年10月25日(火)午後1時30分から、標記セミナーがオンラインで開催されました。
このセミナーは、全障協が厚生労働省から受託した「障害者に対する差別禁止・合理的配慮等に係るノウハウ普及・相談支援事業」の一環として開催されたものです。
最初に全障協の栗原会長から開会のあいさつがあり、その概要は次のとおりです。
1)多くの皆様に本セミナーにご参加いただきありがとうございます。新型コロナウイルス感染は、現在、沈静化に向かっているように見えるものの、依然として注意が必要な状況です。一方、社会経済活動の維持も大きな課題であり、加えて円安や原材料の高騰など一段と経営環境は厳しく、皆様には、障害者雇用の維持・促進や感染予防等にたいへんご苦労されていることと遠察しております。また、今夏は全国各地で大雨や大きな台風による災害が発生しており、被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。2)全障協は、本年度で設立34年目に入り、その間、公益社団法人への移行、全重協から全障協への団体名の変更などの歩みを進めてまいりました。3)国の障害者雇用施策についても、本年6月に審議会の意見書が厚生労働大臣に提出され、大きな転換期を迎えつつあります。4)こうした中、全障協の目的である障害者の雇用の促進及び職場定着の推進に寄与することを実現するため、一層効果的な事業展開を図ってまいりたいと考えておりますので、引き続きご理解・ご協力をお願いします。5)全障協は、一般企業、特例子会社、就労継続支援A型事業所など多様な全国334会員(令和4年6月末現在)からなっており、特定の分野に特化していない唯一の全国団体です。このため、障害者雇用に関する様々な情報・ノウハウの提供や企業見学会等について1団体で対応できることを特色としています。6)平成29年度からは、厚生労働省から合理的配慮に係るノウハウの普及等を目的とした事業を受託し、全国7主要都市に障害者雇用相談コーナーを設置しています。コーナーには専門相談員を配置していますので、是非、気軽に活用いただきたいと存じます。7)本日のセミナーもこの厚生労働省からの受託事業の一環として開催するものであり、今後の障害者雇用に活かしていただければと期待しています。
開会あいさつに続いて、中電ウイング株式会社専務取締役の秋葉覚様より、「障がい者がそれぞれの能力を発揮し成長できる会社を目指して」と題してご講演いただき、その概要は次のとおりです。
1)当社の経営理念は、「共生」と「人間尊重」の精神に基づき、活き活きと就労できる場を創出し、働く喜びを味わい、生き甲斐と誇りを持てる会社にするということである。2)業務内容としては、チラシパンフレット等のデザイン、ダイレクトメール封入封緘、印刷、文書集配、事務補助、清掃や花壇の維持管理等のアグリ事業などを行っている。3)個人差はあるものの障がいを持つ方の特徴として、一般的には40歳代を節目に加齢による体力の低下、認知の衰えが顕在化してきている。このため、加齢対策の一環として、3年間の実証生産を経てイチゴ事業を本格的に開始した。一連の作業を分割して各個人の特性に合った作業をやってもらうことや、労働環境の整ったハウス内での作業にすることなどにより、雇用継続の可能性が広がるのではないかと考えている。4)障がい特性に応じた支援としては、例えば身体チャレンジドについては職場環境のバリアフリー化、聴覚チャレンジドについては社内放送受信や紙詰まりを知らせるパイロットランプを活用している。5)知的チャレンジドについては、写真入りの業務マニュアルを作成し、指示は1つずつ伝える、顔色・体調などに気を配り、変化を感じれば声掛けを行うなどの配慮を行っている。6)精神チャレンジドについては、支援者が各個人の特性に応じた対応を行っており、定期面談・随時面談の活用、業務日報へのフィードバックなどにより心理的支援を行っている。また、実務支援としては、得意な仕事をやってもらう、業務スケジュールを見える化するなどの配慮を行っている。外部の支援機関や医療機関等との連携も重要である。さらに職場生活支援として、休憩スペースの確保、半日休暇・時間休制度を設けているほか、体調によって色分けした体調管理カードを出社した際に提示してもらうようにしている。7)障害者職業生活相談員、ジョブコーチ等の資格を有する総合スタッフ81名がそれぞれの担当するチャレンジドを決めて支援に当たっている。支援者の苦労に対する支援も重要であり、支援者連絡会議などもその1つである。8)以前お世話になった方からいただいた言葉「野菜は足音で育つ」⇒現場の声を大切に、最前線の社員に声をかけ、思いやりを持って接するという言葉を大切にしている。
秋葉様の講演に対する質疑応答の後、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構愛知障害者職業センター主任障害者職業カウンセラーの赤星真二様により、「中高年齢障がい者に対する職業生活再設計のポイント」と題して講演が行われ、その概要は次のとおりです。
1)障害者職業総合センター調査研究報告書No.159「中高年齢障害者に対する職業生活再設計等に係る支援に関する調査研究」の結果について紹介する。本調査研究の目的は、在職中の中高年齢障害者固有の課題の実態、課題改善の取組みについて把握し、効果的な支援方策を検討することである。なお、本調査研究で、「中高年齢障害者」とは、企業で働いている45歳以上の障害のある者としている。2)アンケートの設問「中高年齢の障害のある常用労働者の中で、加齢により変化したものに限らず現状や将来を踏まえて就業上の配慮をしていること。」に対して回答の多かった配慮項目は、「個人の能力に応じた仕事内容の変更」、「本人との積極的な話し合いによる業務内容の改善」、「配置転換等による人事管理の配慮」であり、加齢による体力低下や作業能力への影響が確認された場合、仕事内容の変更を行うことは中高年齢の労働者すべてに必要な配慮である。3)また、「健康診断・脳ドック等の受診勧奨」、「ストレスチェックの実施に関する配慮」、「健康診断等の結果を踏まえた自主的な健康管理の支援」等も度数上位の配慮項目であり、加齢による心身機能への影響は幅広く存在し、個人差があることも踏まえて、職場における中高年齢者の健康管理が重要な取組みとなっている。4)就業上の配慮を行っても残存する課題のうち、障害種別に共通して選択割合が相対的に高い項目は、「精神的側面の支援(不安定さ、体調不良、ストレス、物忘れ等)が必要となる課題」と「職業的基礎能力(集中力、意思伝達、労働意欲等)に関する課題」であり、これらを踏まえた対応が必要である。5)知的障害、精神障害、発達障害及び高次脳機能障害では、障害特性と考えられる課題が残存課題の上位を占めたことから、障害者本人の障害特性のアセスメント等を行った上で障害特性上の課題状況を継続的に把握する必要がある。6)アンケート及びヒアリング調査の結果を通じて導き出された中高年齢障害者の支援のポイントは次の4点である。@仕事に対するモチベーションの維持。継続的な相談や対話が重要、A仕事内容の更なる工夫の推進。企業在籍型ジョブコーチの配置、外部支援機関のジョブコーチとの連携など、B健康管理の充実。障害状況の変化等の可能性に対するきめ細かい対応が必要。本人の特性を踏まえたストレスチェックと振り返りなど。必要に応じて医療機関への受診の同行なども有効な方法。C中高年齢障害者の職業生活設計への困り感の存在が曖昧になっている可能性があり、外部機関との上手な連携も重要。
講演に続いて、「自社の障がい者雇用の課題について」をテーマとした参加者によるグループディスカッションと、その結果を踏まえた全体での質疑応答が行われました。
最後に、大西 中部ブロック長から閉会の挨拶として次のようなお話がありました。
1)セミナーに参加いただきありがとうございました。2)また、講師の方々には、お忙しいなか、ご講演賜りありがとうございました。キャリア形成支援等の適正な雇用管理が各企業に一層求められる中で、本日の講演等は障害者の活躍促進に向けて貴重なアドバイスとなりました。3)セミナーの企画、準備に当たられた名古屋相談コーナーの相談員の皆様もありがとうございました。参加の皆様には、障害者雇用の困り事などの相談に相談コーナーを気軽に利用いただきますようお願いします。4)全障協中部ブロックでは、会員企業が互いに事業所を見学し合ったり、情報共有したりしています。また、オンライン会議の活用により全国の会員とつながり情報交換する機会も格段に増えておりますので、全障協への新規加入を大歓迎いたします。5)最後に、障害のある人の継続的な雇用、安定した経営をうまく進めていただいて、働くすべての人々に安心が訪れますことを心よりお祈り申し上げて閉会のあいさつとさせていただきます。