平成30年度中国・四国ブロック障害者特別雇用セミナーが開催されました。
去る1月31日(木)午後1時から、BIG FRONTひろしま(広島市総合福祉センター・広島市南区)において標記セミナーが開催されました。
当日はまず最初に、全重協の栗原会長から開会のあいさつがあり、1)昨年の4月から精神障害者が法定雇用率の算定基礎に加えられ、法定雇用率が2%から2.2%に引き上げられているが、これを機に精神障害者の雇用に門戸を閉ざさず、積極的にお取り組みいただきたい、2)本日は、精神障害者の雇用のノウハウについてもご講演いただけるので、是非参考にしていただきたい、3)広島市には、全重協が厚生労働省から受託した事業として無料の相談コーナーを設けているので、こちらの方もご利用いただきたいといった話がありました。
栗原会長のあいさつの後は、株式会社良品計画人事総務部の成澤岐代子様から、「精神・発達障害者の雇用と定着」というテーマで講演をしていただきました。
成澤様は、平成28年度に障害者雇用優良事業所として厚生労働大臣表彰を受けた同社において、社会保険労務士として人事労務全般の業務に携わっておられますが、当日は、1)同社の障害者の雇用数は335名。うち276名(82.4%)が精神障害者。雇用率は4.22%となっている、2)障害者の多く(318名)は店舗で勤務している、3)同社では、「職場環境や雇用条件が理解力の高い精神障害者とうまく合っている」「社会的なルールやマナーを理解している」「業務の指示や指導がスムーズにできる」「真面目で良好な勤務態度が期待できる」といった理由から精神障害者を積極的に採用している、4)障害者の雇用が大きく進んだのは障害者を戦力化しているため、5)障害者の採用は店長と人事課の面接のみで行う、6)採用の可否は「(その障害者が)働いている姿をイメージできるかどうか」で判断、7)店舗で障害者を採用する際には、採用前に本人と支援機関に必要な配慮事項等を記入したプロフィール表を作成してもらっている、8)プロフィール表については、その内容が固定化しないよう、その後も随時見直している、9)障害者が仕事の不安を翌日に持ち越すことがないよう、毎日情報共有シートに1行でもコメントしてもらうようにしている、10)情報共有シートの内容は店長だけでなく、社員も共有している、11)本部では、障害者を専門職として採用している。勤務時間は週40時間となっている、12)会計センター武蔵野には、勤続15年以上の障害者が8名いる、13)障害者のモチベーションを上げるため、評価制度を設けている。その結果は賃金に反映している、14)店舗勤務の障害者については、評価結果等を踏まえ、嘱託社員に登用している、15)店舗勤務の障害者が嘱託社員になると、本部嘱託社員の地域別月例給と同額の給与が支給される、16)本部では、障害者が自分の担当する業務を視覚化、構造化するマニュアル作成トレーニングを行うとともに、資格試験に挑戦することを目標にしたりしている、17)店舗では、障害者が自分の行うべき業務や今後やりたい業務を店長と確認している、18)障害者が他店舗に応援に行ったり、本人の希望を踏まえて異動することもある、19)障害者を雇用することで、「みんなで考え、結束力が強くなる」「他者へ配慮する気持ちが強くなり、接客サービスが向上する」「分かりやすく指導するために業務の基本に立ち返り、固定観念が払拭され、新たな気付きや発見につながる」といったメリットがある、20)各店舗が、個々の障害者に応じた独自の障害者雇用マニュアルを作成することにより、指導者の育成にもつながっているといったお話がありました。
成澤様のご講演の後は、今度は、中国・四国ブロックにおいて障害者雇用に積極的に取り組んでいる企業の事例報告ということで、株式会社藤三センター長兼障がい者雇用推進室長の小林弘治様とエフピコダックス株式会社福山選別工場課長の且田久美様のお二人から、お話をお伺いしました。
また、且田様からは、1)エフピコは、取引先を中心に全国で約50社、約670人の障害者雇用についてコンサルを行っている、2)その際、「最低賃金以上の賃金水準」「常用雇用」「定年まで雇用」「障害を理由とする不当な評価や解雇はしない」ということを条件としている、3)同社で働く障害者の9割が知的障害者で、そのうちの約4分の3が重度となっている、4)知的障害者の就職率は上昇しているが、特別支援学校高等部卒業後の進路を見てみると、民間企業や就労継続支援A型事業所に雇用されている者は約3割と、福祉施設への入所が最大の進路という状況は変わっていない。また、就労している知的障害者の約7割は重度以外となっている、5)同社では、特例子会社と就労継続支援A型事業所の両方で障害者を雇用しているが、今後は、特例子会社での雇用を拡大することとしている、6)同社では、食品トレーの製造や回収トレーの選別といった基幹業務を行う障害者を正社員として雇用している、7)障害のある従業員の力が発揮されて、高品質の製品の製造が可能となっている、8)重度の知的障害者も1年から1年半で、働く社会人の顔になってくる、9)障害者には働く権利、挑戦する権利がある、10)障害者が働くことができるかどうかは会社が決めるといったお話がありましたが、且田様が勤務しておられるエフピコダックス株式会社は、平成30年度の障害者活躍企業として、厚生労働省の委託を受けた全重協から認証されています(且田様のお話の詳細はこちらの資料をご覧下さい)。
以上のお二人の事例報告の後は、今度は、会場の参加者全員が少人数のグループに分かれてグループディスカッションが行われました。
このグループディスカッションでは、成澤様や小林様、且田様のお話を踏まえて様々なご意見やご質問が出されましたが、そのうちの主なものについては、コーディネータの森木聡人様(広島県障害者相談支援事業連絡協議会会長)の司会進行の下、各グループの代表から会場全体に披露されました(1)障害者を雇用しても、仕事がうまく合わず離職してしまうのではないかということが不安、2)採用した後でトラブルが起きた際にどう対応したらいいか分からない、支援のし方を教えてくれるところがあるといい、3)障害者雇用について社員の理解がなかなか進まない、4)障害者のステップアップ制度については、障害者のモチベーションを高める上で効果的だと思われるので、自社でも取り入れたい、5)障害者雇用の成功事例からどんなことをピックアップしたらいいか教えてほしい等)。
また、これらのご意見やご質問に対しては、成澤様や小林様、且田様から、1)障害者の雇用は最初は不安でもやってみると楽しいこともある(成澤様)、2)障害者雇用の在り方は一つではない、3)障害者雇用の目標は雇用数を増やすことではなく、雇用を継続することが目標となる、4)労働力として自社にあった人を選ぶことが重要(以上小林様)、5)障害のあるなしにかかわらず一緒に働きたい人と一緒に働くということがエフピコの雇用のスタンス、6)障害者雇用を始めるのは大変でも、いったん始めてしまえば後はそれほどむずかしくはない、7)障害者雇用は楽しいということを是非会場の皆様と共有したい(以上且田様)といったコメントをいただきました。
今回のセミナーについては以上ですが、当日は最後に全重協の薬師中国・四国ブロック長から閉会のあいさつがあり、4時間近くに及ぶセミナーを終えました。